「もう、ここには来るな」



「………え?」




桜坂くんの言った言葉が、理解できない。


頭の中は真っ白で、心臓は止まっちゃったんじゃないかと思えてくる。



「ちょ、っと、待って……」



情けないぐらい声が震えている。


ドクン、ドクンと、嫌でも不安が耳に届く。


それぐらい、あたしは混乱していて。


桜坂くんがこっちに向かっていることも気づかなかった。


ペタン、と座っているあたしの隣を通り抜けて、桜坂くんはさらに追い討ちをかけるように



「もう、俺に関わるな」



そう言って、桜坂くんは屋上を出ていった。




しばらく、茫然とするあたし。



「あはは、あっははは……そっか…あたし、邪魔だったんだ」



そう…だよね。


普通、考えればすぐに分かるはずなのに、なんで思いつかなかったんだろう。


いきなり、そこまで仲がいいわけでもないクラスメートにつきまとわれて……迷惑じゃないわけない。


なんで気づかなかったんだろう。


謝らないと……あ、でももう関わるなって言われたんだよね。


どうしようかな……



「あ、れ……」



ポツポツ、と雫がスカートに落ちる。



「や、だ……雨、降ってきちゃった」



早く、中に戻らないと……



「あれ…おかしい、な……視界が……」



ぼやけて、前が見えない……



「…うぅっ……ひっく…ひっ……ふぇ……」



ポタポタと落ちるそれは、あたしの涙だった。



「な、なん、で……ひっく……」



拭っても拭っても流れてくる涙。


それに比例するように胸が痛くなる。



痛い……痛いよ………


苦しい…こんなの、知らない。



切り裂かれるような、押し潰されるような、よく分からないけど、鋭い痛み。