「宗田ってほんとに面白い……ククッ」


「もう!!笑わないでよ〜」



悪い悪い、と言いながらまだ桜坂くんは笑っている。



「もぉ……」



じとっとした目線であたしは桜坂くんを下から見た。



あたしと桜坂くんが初めてこの屋上で会った日から二週間が経っていた。


今ではこうやって普通に話をしたり、冗談を言ったり……二人でいることが、あたし自身がびっくりするぐらい居心地のいい場所になっていた。


最初の頃は話題とかなくて話続かなかったんだよ?


あとあたしの名前も呼んでくれなかったし……


だいたいが「お前」だったかな。


まぁ、あたしが倒れそうになったときは名前だったんだけど。


その理由を聞いたら無意識だ、だってさ。


それなら普段は意識して名前を呼んでいないのか、と思ったけど聞かないでおいた。


うーん……なんとなく、ね。



「でも、さすがにあれはな……ふっ」


「笑いすぎだよ……」



そんなにあれが面白かったのかな。



桜坂くんが何に笑っているのかというと、遡ること約二時間前……













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「今日もあの先生だよぉー。あそこの席やだ、真琴代わってー」


「……どこに座ってても一緒だと思うけど」


「否定できない」



はぁ、とため息をついてあたしは机に突っ伏した。


あの先生とは言わずもがな、例の弓道部顧問である。


この補習の間、あたしは何回チョークをくらえばいいのだろうか……


いや、ぼーっとしているあたしが悪いんだけどね。



「真琴も一度くらってみればいいんだよ」



地味に痛いんだからね、と言って真琴を見ると



「あたしはアイと違ってちゃんと授業受けてるから、チョークなんて飛んでこないし」



と、なんともごもっともな答えが返ってきました。