あたし、おかしいのかな……
最近、桜坂くんのことばっかり考えてるし。
「さくらんぼ、みたいだな」
「へ?」
「この髪ゴム」
「あ、言われてみれば……」
あたしがあげたのは赤いゴムに二つ、赤い丸の飾りがついているもの。
確かに、言われてみればさくらんぼ。
「クリームソーダにはぴったりだな」
ふっ、と笑う桜坂くんを見て、あたしはつい笑みを溢した。
「なんだ?」
「ふふふ……なんでもないよ」
……なんか、桜坂くんがあたしとの話を覚えてくれてたことが、すごく嬉いな。
すごく嬉しくて、胸の中があったかくなる。
なんだろう……この気持ち。
すごくくすぐったいのに、すごく気持ちいい。
「そろそろ補習始まるな」
「あ、もうそんな時間なんだ」
時間が過ぎるのが早いや……
もう少し、一緒にいたかったな。
でも仕方ないよね。
サボるわけにもいかないし。
「じゃあ戻ろっか」
あたしは立ち上がって軽くスカートを叩く。
「いや、俺は……」
少し言い淀む桜坂くん。
あ、もしかして……
「桜坂くん、サボリはダメだよ。さっきもサボってたんだし」
まぁ、桜坂くんはあたしの何倍も頭がいいから先生に何も言われてないけど。
あたしと違って。
「今のままだとそのうち怒られるんだからね」
びしっとあたしは桜坂くんを指をさして言う。
……あれ、反応が微妙だ。
桜坂くんのためを思っての言葉なのに。
「はぁ……お前は…」
「え、あたし何かヘンなこと言った?」
というかため息つかれるようなこと言ったかな。
「…なんでもない。ちゃんと授業には出るから、先に行っとけ」
「う、ん……分かった。
じゃあ、また教室で」
「あぁ」
少し笑っている桜坂くんに手を振って、あたしは屋上を出た。