「俺さあ、デザイナーに
なって、自分のブランド
立ち上げるのが夢なんだ
俺が作った服を、いろんな人に着てもらうのが」
「そうなんだ……」

そんな趣味悪い服、多分
一生流行らないと思う……と、いうのは言わないで
おく。

「服っていいよね。その人
がどんな人なのかわかる」
「うん」

確かに、あなたが変な人
だっていうの……わかったよ。と、これも言わないでおく。

食べ終わって、私たちは
これからどうするのかに
ついて話し合った。

「さっきのじいさんが言っ
てた事が本当なら、もう
日本には安全な場所は
ないな……海外に逃げる
しか……冴、パスポート
持ってる?」
「持ってない……てゆうか
その前に、私たちのために飛行機飛ばしてくれる人がまずいないと思う。さっきやってみたけど、携帯も
使えない……」
「日本人全員が敵……」
「恐過ぎる……」

私が言うと、日は笑って
いるとも怒っているとも
とれる表情で言った。

「なんかさあ!寂しいとか
絆とか助け合いとか、
そういうきれいごとじゃあなくても普通に人は一人
じゃあ生きられないんだな……飯食うには、作る人間と売る人間と、買う金
稼がしてくれる人間が
いないとダメ。電話使う
には、使えるようにしてくれる人間がいないとダメ
一人の人間が生きるのに
百人位の人間が関わって
る……」
「百人じゃあ足りないよ
……そして、一人を生かすための人もまた、誰かに
生かされている……
不思議だね。その中で顔や名前を知ってる人は、
ほとんどいないんだから」
「さて!感慨深い思いに
浸ってる場合じゃあないなこうしてる間にも、俺たちを捕まえる準備は着々と
進んでいる……」
「脅かさないでよ!」