−−2年前。

「あの子って変わってるよね」
「趣味悪いよねぇ」

私の名前は鈴木冴。中学1年生。中学生になってひとみという子と友達になったひとみは個性的な子だった自分の意思をはっきり言える子だった。そんなひとみに私は憧れていた。でも……みんながそう思うわけじゃなかった。むしろ、あまりに人と違うものを好むひとみをみんなはすぐに嫌い始めた。
クラス全員から無視されることから始まって、靴を隠され、教科書に落書きをされ、物を投げ付けられたりした。本人のそばで、みんな平気で悪口を言った。

私はひとみを助けたかったでも、できなかった。そしていつからかひとみは学校に来なくなった。後悔した。でも、次のターゲットにだけはなりたくなかった。そしてそのとき私は、自分らしさの恐ろしさを知った。「自分」を主張すれば、ひとみみたいになる。それは絶対に嫌だ。
そして私は、自分を封印した−−

「冴、そのシャーペンかわいいね」
「うん」

いじめられたくないなら、自分を押し殺しておかなくてはいけない。
自分がどう思うかなんてどうでもいい。周囲が「かわいい」と言ったものはかわいいし、周囲が「ウザい」と言ったものは何あれウザいのだ。欲しくも無いものを「おそろい」のために買い、着たくもないものを「前から欲しかったぁ」と言って着る。似合いもしない髪型も、みんながしていれば真似する。これが私の考える、当たり障りのない生き方。こうすれば、いじめられなくて済む。自分が好きなものなんて、もう無いよ。こんな私のもとに、それは突然訪れた。