「て…てんし…?」
「はいっ、こんにちは!じゃないや!えっと、こんばんは!リリアと言いますっ!」
リリア、と名乗ったその少女は、てれてれとしながら天真爛漫って感じに話し出した。
「私は――、えっと…天使ですっ!“愛の天使”なんて神様には言われてますけど…実際は非リア充とみなされる人々に、リア充のチャンスを与える仕事を請け負っています。よろしくお願いします!」
「…は、はぁ………」
どうしたのだろうか。
この子はクレイジーなんだろうか。
そもそも、この子は天使に見えない。
羽も、頭のリングもない。
ただ春なのに白いポンチョと白いワンピース、白いブーツに身を包んでいて、現実的な子ではない。
暑くないのか。
「…あっ、やっぱり、信じてもらえません?」
えへ?と笑う彼女を、あたしはまだぽかんとした目で見ていた。
「そうですよね、今仕事用じゃないですし…。う~ん…体力今ないんだけどなぁ…」
彼女の話に、ついていけない。
仕事用?体力?何この子、職業何?
あ、天使か。
いやいやいやいや、天使って何?
「…でも…、あなたのような人に出会うのは初めてですし…やっぱり信じてもらった方がいいですよね…」
そういうと彼女は、にこっとあたしに向けて笑った。
「―――目、つぶらないでくださいね?」
そういうと彼女は、すうぅっ、と大きく息を吸った。
ぱああああっ、と部屋が光に包まれた。


