「梨加」



静まり返った保健室にわたしを呼ぶ愁の声が響いた。



「んー?」



「帰るぞ」



呑気に返事をすると、返ってきた愁の声。



「あぁ!そうだね」


その愁の言葉に相づちをうって、よいしょ。とイスから立ち上がる。



そして、歩き出そうと慎重に足を出そうとしたとき。



スッと愁がわたしの目の前に背を向けて屈んだ。



「しゅ、愁?」



なにしてんの?と問かければ。彼は、わたしのほうをちらっと見て、不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。