『だけど、ずっとそれだと困るでしょ?将来就職して、職場にイケメンがいたらどうするのよ。
うっかり手が触れるなんてことあるわよ。蕁麻疹出るからその人と仕事できませんなんて通用しないわ』
正論を畳み掛けるように言われて、それに勝てる言葉が思いつかなかった。
あたしはベッドに体を倒して、息をはいた。
「もう、わかったわよ。彼と付き合って、蕁麻疹を治せばいいんでしょっ」
『そんな投槍に言わないで。朝倉くんは本気なんだから。春希も本気で彼と向き合わないと治らないわよ』
まっとうな柚子の言葉にあたしは恥ずかしくなった。
いい加減な気持ちで彼と付き合っちゃいけないんだ。
付き合うなら、ちゃんと彼の気持ちを受け止めて考えなきゃいけない。
「…そうだね」
あたしは小さく呟いた。
「彼の気持ち、真剣に考えてみる」
『そうしなさいね。それにしても、これでもし本当に二人がくっついたら、あたしってキューピッドね』
「キューピッドって…」
『だって、そうでしょ?あたしのおかげで春希は朝倉に嘘の告白をしたんだから』
これをおかげと言うのか、せいでと言うのか。
あたしは大きくため息をついた。
そう、すべては柚子のせいなのだ。



