四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


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夜、あたしはベッドの上に座りこんで枕を抱きしめながら、朝倉くんと付き合う元凶となった友人の柚子(ゆずこ)に電話をした。


『春希、例の告白はどうだった〜?』

「おかげで付き合うことになったんだけど、どうしてくれるのよ」


ふて腐れた声を出した途端、電話の向こうから笑い声が響いて、あたしはイラッとした。


「驚かないのね。もしかして、朝倉くんの気持ち知ってたわけ?」

『だって彼、わかりやすいもの。気付いてなかったのって春希くらいじゃない?』

「そう…なの?」


わかりやすいってどういうことだろう?

好きなんて言われたことなかったし、蕁麻疹でない距離を保っていたので、気持ちをアピールするような行動された覚えもなかった。


もしかして、あたし、鈍いんだろうか。


『あたし、朝倉くんと春希はお似合いだと思うんだよね。彼なら、春希の変な蕁麻疹も治してくれるんじゃない?』

「変って、そんな言い方しなくても…」


『だって変じゃない。顔の整った男にだけ蕁麻疹が出るなんて』

「世の中にはそういう蕁麻疹もあるのよ」


たぶんだけど、と心の中で呟く。