四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


「そういえば、そんなこと言ったかも…」


隣の席の綺麗な男。

関わり合いにはなりたくないタイプの男だった。


でも、一瞬、嫌そうに眉が寄ったのを見てしまったんだ。

そのすぐ後に笑顔を取り繕う姿に、つい口を出してしまっていた。


なぜか朝倉くんの笑顔は、嫌な裏表の笑顔ではなくて、自分の気持ちを素直に言えない不器用な人なのかなって思ったんだ。


「みんな、俺の上辺しか見ないのか、笑顔を見せると本当に笑ってるんだって思うんだよな。

だから、本当は嫌なんだって初めて当てられて驚いた。

しかも、鮎川は俺に言った後、自分で女子の学級委員に立候補しただろ?そういう嫌なこと進んでやるところもカッコいいなって思って、もっと鮎川を知りたくなったんだ」


だから結局、俺も学級委員に立候補したんだよと笑う彼を信じられない気持ちで見ていた。


何気なく言ったことで、好かれようとか何も考えてなかったのに。

そんな風にあたしを見てくれてる人がいるんだ。


そう思うと、胸がじんわりと熱くなる。