四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


「あ、そっか、ごめん」

「もういい。俺は着替えてくるから、ちょっと待ってて」


そう言って立ち上がると、部屋を出て行った。


「もうデートの邪魔はしないから、倫と仲良くしてやってね」


幸さんの言葉に、あたしは乾いた笑みを浮かべた。

付き合っているけど好きではありません、なんてことはとても言えなかった。


*****


「今日は悪かったな」


男の姿に戻った朝倉くんと彼の家を出て、道を歩いていた。

朝倉くんの立てたデートの計画はすっかり狂ってしまったようだけど、とりあえずどこか近くでごはんを食べることになったのだ。

比較的、駅前に飲食店が多いらしいので、そっちに向かっている。


「ううん、珍しいものが見れたし、面白かったよ」

「頼むからあの姿は忘れてくれ」


そう言う彼の耳は赤かった。