四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


あたしは自分の名前が出たことにビックリして、首をかしげた。


「お知り合い…でしたでしょうか?」

誰かわからずに敬語になる。


ここにいるということは、朝倉くんの妹さんとか?

でも、朝倉って女の子に覚えがないし、こんなに可愛い子だったら絶対忘れないと思うんだけど。


その時、朝倉くんのお姉さんがあたしの肩を叩いた。

「これ、うちの倫なの」


その言葉が脳内に浸透するまで一拍。


「え、ええええっ!?」


あたしは目を見開いて、彼女…いや、彼を凝視した。

いつもいつも綺麗な男だと思っていたけど、女装姿がここまで違和感ないとは。


朝倉くんはひざ上の白いレースワンピースを着ているんだけど、腰も腕も足もあたしより細い気がする。

胸も何か詰め物しているのかちゃんとあるし、朝倉くんはもともと肌が白いこともあって、言われなきゃ男だって気付かない。

いや、言われたって朝倉くんを知らなきゃ男だと信じられない。


そのくらい女の朝倉くんがそこにいた。

彼は不機嫌な顔で、あたしから逃げるように顔をそむけた。