四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


『はーい』

応答に出たのは若い女性の声だった。


「あ、あの、朝倉くんはいますか?」

ご家族の登場に、緊張が増して声が上ずる。


『はい?』

女性の不審げな声にはっと気づいた。


そ、そうだ、ここでは全員朝倉さんじゃん!!


朝倉くんと言ったので、男性のことと言うのはなんとなくわかると思うけど…。

彼に兄か弟がいるかも知らない。

朝倉くんが彼一人ではない可能性もあるよね!


あたしは慌てて続けた。


「あの、朝倉倫くんです!あたし、今日会う約束していたんですけど、彼が来ないので…」

『ええっ、倫、今日がデートって本当だったの!?』


と女性が大きく喋ったかと思ったら、ガチャッと切れた。


それからすぐに、玄関の扉があいた。


「ごめんなさいね、倫、家にいるから上がって」

顔を見せたのは、顎のあたりで髪を切り揃えた20歳くらいの女性だった。