四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


『鮎川がまだ俺のこと好きじゃないのも、蕁麻疹が出るから触れられないのも分かった。

でも、もっと俺のこと知ってほしいんだ。触らないように気をつけるから、ダメかな?』

「やっその…」


電話の向こうでうなだれている彼の姿が想像できてしまう声音に、とても断りづらかった。


付き合いだして、いきなりデート。

突然すぎる気もするけど、春休み中に付き合いだしたらそれも当然な気がする。


「わかった。明後日ね」

『ありがとう。詳しい待ち合わせ場所は後でメールするよ。それじゃお休み。良い夢を』

「お休みなさい。朝倉くんも良い夢を…」


お休みに良い夢をなんてつけるなんて、なんかキザだ。

さすが朝倉くんだ。


あたしはまたベッドに寝転がった。

手に力が入らなくて、投げ出すように携帯をそばに置いた。



彼は本当にあたしを好きなんだ。


今まで全く気付かなかったことなのに、気付いてみると、彼のちょっとした言動に愛があふれている気がする。


どうしよう。