四月の魚 〜溺れる恋心〜【短編】


だって、朝倉くんが好きな子がいるって言って断るのは有名な話だもの。


「じゃ約束よ。ちゃんと告白してみること!」

「ええっ嘘!?」

「朝倉くんに春希から告白されたか確認するからね、絶対だよ!!」


こうしてあたしは柚子に押されて、なぜか好きでもない朝倉くんに告白することになったのだった。


柚子にどう言われようと告白しないってことも考えたけど、

告白するまで柚子にしつこく言われそうだし、エイプリルフールの嘘だって誤魔化せばいいかなって思ってた。


誤魔化すというか、嘘が真実なんだけど。


でも、まさか朝倉君の好きな人があたしで、告白さえすれば付き合うのは確定な話だったとは…。



事の顛末を思い出していたあたしは柚子に嫌味を言いたくなった。


「柚子は気軽に告白しなって言うけど、今日も朝倉くんに触れたせいで蕁麻疹出て大変だったんだからね。

蕁麻疹って気が狂いそうなほどかゆくなって耐えられないんだから」


『ありゃりゃ、それは朝倉もショックだっただろうね〜』

「柚子、楽しんでるでしょ。人の不幸で楽しんでるんだから、今度ケーキでも奢ってよね!」


あたしは言い捨てるように電話を切った。

その途端、鳴りだす携帯にビクッと肩が揺れた。