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「てかさ。あの更科くんと同じクラスとか、
うちらラッキーだよねー」
「ほんとそれねー!
一年中見放題。今だって、他のクラスの子、何かと用事をつけてうちのクラスに来てるけどうちらはその必要無しっ♪」
「感謝しなきゃ。ありがとっ神様」
「ありがとうございまーす神様」
彼と私が遠い遠い人だっていうのは、
昼御飯中の会話からも、明らか。
ユリと有紗は高校からの友達。
中学もすごかったけど、高校では更科くんは前にもまして、もはや芸能人なみに崇められている。
「リッコがうらやましーよ。
同じ中学だったとかさっ。あっ今度卒アル見せてよ~」
「あたしも見たーいっ」
「う、うん、いーよもちろん!」
ふたりは嬉しそうに目を輝かす。
去年も、更科くんと同じ中学だと知るかいなやいろんな子に卒アル見せてと頼まれたものだ。
「三枝~。黒板消せー」
次の授業の教師が叫ぶ。
「あ、今日日直だ」
すみません、とあやまりながら、あわてて黒板を消そうとするけど、
文字が高いところまでびっしりかかれていて、
背伸びしても届かない。
「っ」
もうすこしなのにーーー!
足元がプルプルする。
そばにいたクラスの男の子が、見かねた私にこえをかけてきた。
「ぷ。……三枝さん、大丈夫? 代わろうか?」
恥ずかしい。笑われた……
顔を真っ赤にしながら、
ごめんなさい、お願いします、と言おうとしたとき
「……!!」
私が差し出した黒板消しは、親切な男の子ではなく、突然後ろから現れた更科くんに奪われた。
「……更科」
唖然としている私たち。
更科くんはそれにかまわず、無言でチョークの白い文字を落とす。
さすがのスタイルで、普通にたっているだけで黒板なんて余裕に届く。
更科くんはちらり、と横目で男子を見た。
「葛西。俺がやるから、お前は座ってろよ」
私からは更科くんがどんな顔をしていたのか全く、見えなかったけれど
葛西くんというらしい(今はじめて知った)男子はなんだかごくりとつばをのんだように見えた。
「……」
葛西くんは無言で自分の席に戻っていく。
「あ、ありがとう、葛西くん」
あわてて声をかけると、葛西くんはふと振りかえって
にこりと笑った。
「……」
「あの、更科くんもありがとう」
「更科くんも、って」
不満げに睨まれる。
「……え、あ、ごめん。
も、じゃなくて、更科くんありがとう」
「……葛西ってさあ。いっつも三枝のこと見てるよね」
「……はあ!?」
