秀樹は、毎朝早く起きて夏休みを友達と遊んだりと満喫していた。



しかし先日の釣り以来、とおると武志の二人はあの場所に行く事は完全に拒否していたのだ。



「ビビりやがって! あいつら」



秀樹は仕方なく一人で河童山に行っていたのだが、あれからも河童を見る事は出来ずにいた。



「あかん……カッパァに興味ありすぎて、夏休みの宿題できてへん……
まぁ……いいわ。カッパァのが大事や!

あいつらたぶん腹へらしとるんやからカエル一杯持っていったんねん!」



今日もまたあの山に向かう途中、秀樹は隣のクラスの女子と偶然出会うこととなった。



それは、秀樹が恋心を持っている相手だったのだ。



学校では、秀樹は一番モテている。
スポーツもでき、明るい性格だったから周りにはいつも女子がいたのだ。
しかもルックスが良いとなれば、チヤホヤされて当然だろう。



しかし、秀樹は一人の女の子だけが気になっていたのだ。



その子の名前は【菊池 ゆい】
彼女もまた、秀樹に恋心を抱いていた。
しかし二人とも友達にからかわれるのを防ぐように、気持ちは隠し学校生活をしていた。



「おーい! ゆいちゃん! 今からどこ行くん?」



「あ! 秀くん! お家にね、帰るところだよ! 秀くんはどこに行くの?
え。なにそのバケツ?」



「あー! カエル捕まえてきてん!」



「え……カエル……なにするの……それで……」



「あー!  餌やねん! そうだ!
ゆいちゃんも行こう!
一人で行くのつまらないし!」



カエルを持ってるなんかお構いなしに秀樹は、軽くアプローチしていた。



「でも……カエル……」



「あー! 大丈夫!」



なにが大丈夫なのか分からないが、誘うことに必死になっている小学校生活での最後の夏休みだった。