カッパァ華

「おとん、アリって力持ちやな」



庭に一列に並び運んでいるアリを見ながら、秀樹は呟いていた。



この頃の遊びと言えば、テレビゲームなどもまだ数多くは普及しておらず、自然が遊びとなっていた。



情報も手軽には知ることもできなかったがその分、身近な自然に目を向けることにより、毎日のように新しい発見が秀樹の目には映り込んでいたのだ。



「あ。金魚にエサやらな!
たくさん食べて、立派な鯉になるんやぞ!」



「金魚は鯉にはならんぞ、秀樹」



水やりを終え、秀樹の近くに政吉が近付いてきていた。



「え……そうなんか……
この水槽じゃいつか破裂すると思ってたけど、それじゃあ安心やな!」




「良かったな……秀樹」




「良かったぁ! そうや今晩、小学校で盆踊りあるやろ? 一緒に行こうや!」



「あぁ。少し覗きに行こうか」



「おー! やった! じゃあそれまで俺は、またカッパァいるか池に見に行ってくるわ!」



秀樹は自転車に乗り、軽快にペダルを漕いでいた。