カッパァ華

「ここまで来たら、安心や!」


秀政が入口に着いたとき、とおるが落ち着いた表情で話しかけてきていた。



「お前ら、びびりすぎや……」



「いや、ちゃうねん!
武志が一人で可哀想やったから、俺もついていってん……
ただ……それだけや……」



こういう上手く世の中を渡ろうとする性格は、きっと大人になっても変わらないであろう。



「…………まぁいいわ……とおるが好きな子が見たらきっと嫌われるな。
やっだぁ! とおる君って、メッチャかっこわる~い! って言われるぞ……」



「言うなよ……絶対言うなよ……
あれは、演技や……
演技力あったやろ……俺……」



呆れている秀樹の横には、地面に座り込んでいる武志がいた。


「武志、お前の竿無くなったな……」



「竿は、また買ってもらうからいい……
それよりもカッパに追いかけられなくてよかったわ……」



「まだ言うてんか……
カッパァが悪者なんていつ決まったんや」



「だって……」


悲しい表情をした秀樹は、そのまま自転車に乗り自宅に向かおうとしていた。


「帰るぞ……」