「えー! これママなの?」



「そうだよ、優也。 隣にいるのは小さい頃のパパだよ」



「えー! ほんとにー? じゃあ、この横のおじさんは?」



「それは、パパのお父さん。
優也から見たら、おじいちゃんになるんだ。
優也が生まれる前に亡くなっちゃったんだけどな」



秀樹は、我が子の優也に優しく教えていた。



「なぁ、ゆい」



「はい。懐かしい写真を見てたんだね。
いきなりどうしたの?」



「夏が来るとやっぱり思い出すよ。
あの時の事は。いくつ歳を重ねてもね」



「ねえ、ねぇ! なんの話をパパたちしてるの? 僕にも教えてよ!」



「そうだな。優也もあの頃の俺たちと同じ年代になるんだよな」



「僕ももう、来年は中学生になるんだから!」



「そうだよな。もうそんな年ごろだもんな」



ゆっくりと、秀樹は語り出した。



「昔な、パパとママは河童に優しさをもらったんだ」



そう話す秀樹の耳には、
カッパァ華が咲き誇る場所で、あの頃の河童の鳴き声が優しく聞こえていた。








小さな頃の秀樹やゆいが体験したように、真偽を思い込みだけで判断すると、大切な物を見逃してしまう。



勇気を出しそこを開くと、小さな宝箱があるかもしれないのに。



そして、その宝箱の中には優しさという宝物が眠っているかも。



それは、永遠に親から子へと、受け継がれていく物語り。








End…………