翌朝、荷物を乗せたトラックが山井家の前から出発をしようとしていた。



村人たちも急な引っ越しに、寂しさの色は隠せずにいたが、大変な引っ越し作業も快く手伝ってくれていたのだ。



近くに住むおばあちゃんは、いつものようにまたキュウリをたくさん持ってきてくれていた。



秀樹と政吉は、それを見て懐かしい記憶を思い出すかのように、涙が流れ落ちた。




そして、秀樹は父親の車に乗り、寂しい表情で母親との思い出もある家を見つめていたんだ。



「俺、忘れない。この村での事は絶対に忘れないから。大人になっても忘れたりしないから。忘れたくない……
おかんの事も、学校の事も、カッパァの事も……」



そう呟く秀樹に、車外から大きな声で呼ぶゆいの声が聞こえて来ていた。


「秀くん!」





「秀くん! 待って! 」