自宅に戻った親子は、たくさんの想い出がつまった部屋を眺めていた。



ここは母親が立って笑っていた場所

ここは3人で優しく話した場所



そういった出来事を思い出しながら、大切な場所を離れなければいけないという深い苦しみと悲しみが、秀樹も政吉の心にもまた悲しい色で染めていたのだ。



今回の引っ越しは、決して楽しいものではなく、寂しげな事しか運んでは来なかった。


しかし、それを現実として受け止めなければならない。



しかし幼い秀樹には、充分理解ができる心の余裕はなかったのだ。



幼いながらに、どうすることもできない現実に、自分自身の力不足を感じているのかもしれない。



しかし、その悔しさをバネに成長していくのも人間なのだ。



そして、様々な想いを抱えながらも時間は止まることはなく、引っ越し当日が訪れてしまう。