朝早くから、秀樹は準備をしていた。



「おとん、そろそろ行こう……」



「ああ。あとはスコップ持ったらすぐ行くから、玄関で待っていてくれ」



父親が荷物を背負い、準備を整えると、二人は河童山へと向かっていた。



村では大騒動となった山火事も、村の住民たちは口々に怪我人のいなかったことを伝え合い、火が消えた事への安堵の色を浮かべていた。



「良かったなぁ! 一人も怪我人がおらんくてな」



「ほんまほんま! あんなに燃えたのに奇跡やな」



「まぁ、あの山の木々や自然はもったいないが、またいずれは生えてくるだろうしな」



「あぁ。池の水もまた雨が降ればたまる
だろう自然とな。
何はともあれ良かった良かった!」



その声を秀樹たち二人は河童山に向かう途中で聞こえてきていたが、声には出さずグッと我慢していた。



二人が山に着いたとき、ゆいが二人を待っていた。



「あ。ゆいちゃん……」



「きっと来るだろうと思って待ってたんだ……」