父親が当時の話を話し終えるのを、秀樹は黙って聞いていた。


「良かった……生き延びたんやな……」


政吉は呟いていた。



「でも、おとん……なんで大人たちはそんな酷いこと……
カッパァたちは何も悪さをしてないのに。ひどいよ……そんなの……」



そう話す秀樹の目からは涙がこぼれ落ちた。



「おじいちゃんの時代も、お父さんの時代もな、人間は無意味な殺生を繰り返して来たんや。
本当にそれが危険かどうかも判断せずにな。たくさんの者が集まれば、人から嫌われないように、間違ってると分かっていても、その意見に賛同する。

お前はそんな大人には、なったらあかんねんぞ……
間違ってることは誰が反対しようと、貫き通さないとあかんねや……」



「おれは、そんな大人にはならない!
おれは、カッパァを守るんや!」



「そうかそうか。それを忘れずにな」



秀樹が部屋に戻ると、政吉は戸棚を開け、木箱を取り出していた。


その中には小さな手の骨が大事に保管されていた。


「生きてたんやな……ほんまにほんまに、よかった……」