ーーーーー彼目線ーーーーーーーーーーー

俺は吉島友志。


高校2年でバスケ部に入っている。


俺には好きな人がいる。


石川莉奈。


喋ったことはない。


たまに部活の休憩時間に1人で走っている姿を見る。


走り終わった後の眩しい笑顔にひかれてしまった。


喋ってみたいとは思うが喋るきっかけがない。


莉奈ちゃんは校内でNo.3に入るほどの可愛い子だ。


もちろんモテる。


バスケ部の中にも莉奈ちゃんのことを好きな人も少なくない。


彼氏いるんだろうな…。


第一、あっちは俺のことなんか知らないと思うし…。








弘「あ¨ー疲れたー!友志、休憩時間なったぞ。早く倉庫に行って休もーぜー」


「お疲れ」


こいつは俺の親友の弘樹(ひろき)。


中学校のときからで付き合いが短いが今では唯一無二の存在だ。


弘「友志!早くしないと莉奈ちゃんの走っている姿見れないぞー笑」


もちろん俺の好きな人も知っている。


俺の好きな人を知っているのは弘樹だけだ。


弘「つか、ずるいよなー!新崎先輩と斉藤先輩と岩田先輩だけスリーポイントシュート10回連続で入って先に早く休めるとか」


新崎先輩と斉藤先輩と岩田先輩は校内でNo.5に入るほどのモテ男で有名だ。


新崎先輩が莉奈ちゃんのことを好きだという噂も聞いたことがある。


弘「おーい、友志?話聞いてる?」


「…おっ、おう!」


弘「あっ、でもその前にトイレ行ってくるわ。さっきから大の方我慢してたんだった」


「お前下品」


弘「やっぱ素のままでいられるのは友志の前だけだわ」


「はいはい(笑)はやく行ってこいよ(笑)」


弘「なんだよー、はいはいって…。じゃ!」


そう行って弘樹はトイレに走っていった。


俺を含め、弘樹以外の2年生たちが倉庫へ戻る。


俺たちの学校のバスケ部は厳しいと有名で、練習についていけない奴は入ってからだんだん辞めていく。


だから人数は少ない。


その分1人1人に監督がアドバイスをよくしてくれる。


そのおかげか、俺たちの学校は県内でもトップレベルだ。


ガラガラガラ


先頭にいる生徒が倉庫のシャッターをあげる。


生徒A「先輩たちなにしてるんですか?」


よく見ると明かりのついた倉庫で新崎先輩らが誰かを囲んでいる。


(莉奈…ちゃん…?)


それは莉奈ちゃんだった。


(え…?!)


しかも莉奈ちゃんはブラウスをはぎとられ、上半身はブラだけの姿になっている。


莉「ん¨ーーー!ん¨ーーーー!!!!」


莉奈ちゃんが涙目でこちらを見ながら縄でしばられている足と手を必死にばたつかせている。


新「調度いいところにきた」


2年男子A「そいつ、確か石川莉奈でしたっけ?校内でNo.3に入る可愛い子っていうので有名ですよ。」


2年男子B「てかどんな格好させてるんですか!」


岩「そうそう。お前らも莉奈ちゃんの胸見てみたいだろ?」


2年男子C「見てみたいっす!!」


2年男子D「俺も!」


2年男子E「俺も俺も!!」


2年男子F「変態か!……っていう俺も見たい!」


俺の回りにいる男子たちがどっと笑う。


斉「お前たち手伝え」


2年男子A「了解でーす。なにすればいいっすか?」


俺以外の男子たちが近づいていく。


(莉奈ちゃんと目があった…!)


莉奈ちゃんが涙ぐんだ目でこちらを見てくる。


助けて、と目で伝えるように。


(莉奈ちゃんの彼氏ではないけど、他のやつらに莉奈ちゃんの今の姿を見られたくない!)


そう思うが体が動かなかった。


2年男子B「めちゃくちゃ可愛いっすね!
…てか泣いてるじゃないですか!?先輩たちなにしてるんですかー。俺がそそられるだけですよー」


(そんな目で莉奈ちゃんを見るな…!!)


2年男子C「てかすげー。ウエスト細いし胸調度いいし。最高じゃないですか。」


2年男子D「女子の胸生で初めて見た。やわらかそー。」


2年男子E「俺もこんな彼女ほしー!んで、触りまくりてー!」


2年男子F「こいつ猿だ!」


ギャハハハ


俺以外の男子たちが下品に笑う。


新「だーめ!莉奈ちゃんは先に俺が触るの」


2年男子E「ちぇー。分かりましたよ。でもその次俺に触らせて下さいね。」


2年男子A「先輩、スカートは脱がせないんですか?」


新「あ、そうそう。忘れてた。よし、脱がすぞ。」


「ん¨ーーー!」


(莉奈ちゃん…。くそっ!なんで体動かないんだよ)


2年男子B「可愛いー。ちょっと大人しくしててね」


莉奈ちゃんのスカートを脱がせようとする。


(今俺が莉奈ちゃんを助けに行っても他の2年の奴らに押さえられるだけだ。)


莉奈ちゃんは股でスカートを挟み、脱がせないように力をいれていた。


(どうすれば…。そうだ!)


俺は全速力で顧問の元に向かった。


「先生!ちょっと来てください!頼みごとがあるんです!」


そう言って先生の手をひっぱりながら倉庫へ走る。


バスケ部の顧問「お、おいっ!友志!」


「先生!今日は試合のレギュラー発表の日ですよね?」


バスケ部の顧問「そうだが…」


「今すぐ発表してください!」


バスケ部の顧問「いいが…こんなに走らなくてもいいだろ…」


「先生お願いします!」


バスケ部の顧問「はぁ…」


倉庫に着いた。


「先生早くみんなに言ってください!!」


バスケ部の顧問「お、おうっ」


バスケ部の顧問「おーい、お前らそこでなにしてるー?今度の試合のメンバー発表と作戦会議するからちょっと来い」


新「ちぇっ」


新崎先輩の舌打ちが聞こえた。


バスケ部の顧問「おい、新崎聞こえたぞー。作戦会議は延長で、メンバー発表だけにしてやるから、はやく来い。」


新「はいはい。…ったく。いいところだったのに。」


他の男子たちが「えー」や「お楽しみは後回しか」など、口々に言っている。


(間に合った…)


新崎先輩が俺の手をひいて倉庫の中へ入れる。


新「あ、友志。莉奈ちゃんのこと見張っておいて。続きしないとね。メンバーも俺が代わりに聞いてくっから、いちばん莉奈ちゃんに興味なさそうなお前に頼んだ。逃がしたらどうなるか、分かってるよね…?」


そう言って新崎先輩とそれ以外のみんなが体育館に戻っていった。


(…莉奈ちゃんは!?)


見るとスカートが脱がせられている。


(くそっ!)


莉奈ちゃんの体が震え、泣いている。



莉奈ちゃんに近づく。


フワッ


莉奈ちゃんの肩にブラウスをかけ、手と足を縛っている縄をほどいた。


「逃げるよ!」


莉「えっ?」


俺は莉奈ちゃんのブラウス以外の制服、靴下、靴、鞄を持ち、私の手をつかんで走り出した。


倉庫を出ると辺りはすっかり暗くなっている。


倉庫から1・2分したところで俺は立ち止まり、莉奈ちゃんのの手を離した。


2人の間に沈黙が流れる。


莉「………………あり…がと。」


「…ん?」


莉「……ありがと。」


「うん…」


(無我夢中で走ってしまった)


莉奈ちゃんは安心したせいか、体の力が抜け、へなへなと座り込んだ。


莉奈ちゃんの頬に涙が流れる。


莉「ファーストキスは好きな人としたかった…なんであんな奴と…」


莉奈ちゃんが呟いた。


(莉奈ちゃんファーストキスしたことなかったんだ…。)


「ファーストキス、したの?」


莉「えっ?」


心の中だけで言っているつもりだったらしい。


莉「…うん」


莉「ハハ…好きでもない人にファーストキスとられちゃった…」


莉奈ちゃんは次第に泣きかたがひどくなり、最後には嗚咽をあげながら泣いていた。






次の瞬間、俺は無意識に莉奈ちゃんを強く抱き締めキスをしていた。


「ゆっ…ヒック…ゆうし…くん?」


俺は莉奈ちゃんの声で我にかえった。


「…っ!ご、ごめん!」


俺は慌てて莉奈ちゃんから離れた。


「しょ…消毒!消毒だよ今のは!新崎先輩に汚されたから消毒!」


(俺何いってるんだろ…てか、俺なにしてるんだろ!キスしちゃった…こんなことされたら嫌だよね)


「ハハハ…なにそれ…」


莉奈ちゃんは嗚咽が止まり笑っていた。


「石川莉奈だっけ?莉奈ちゃ…石川ごめん。助けてやれなくて。先生呼ぶので精一杯だった。」


(危ねっ!莉奈ちゃんって呼ぶとこだった。初対面で莉奈ちゃんって馴れ馴れしいよね。)

【ちょっと女々しすぎるな…by作者】


「友志くんが呼んでくれたの?」


(俺の名前知ってるんだ…!)


俺は嬉しくなったが、その嬉しさがバレないようにそっけなく答えた。


「一応」



莉「ありがとう。本当に助かったよ。」


莉奈ちゃんはそんなことは気にしていないようだった。


ふと莉奈ちゃんの体に目がいく。


「…っ!」


俺は顔を慌てて顔を横にそらした。


暗闇に目が慣れたのか、莉奈ちゃんの下着姿がぼんやりと見えた。


友「石川!早く服着ろ!」


莉「へ…?」


莉奈ちゃんは自分の体を見た。


莉奈ちゃんは顔を赤くし、俺からバッと服をとって、すぐに着替えた。


(相当ショック大きいだろうし、こんな時間だから送っていこう。確か莉奈ちゃんは電車通学だったはず。)


その後莉奈ちゃんは「申し訳ないからいい」と言っていたが強引に駅まで送って行った。


しかもメアドまで交換してしまった。


俺はスキップまじりで体育館に戻っていった。








駅から戻っている頃には部活が終わっていた。


弘「友志!どこ行ってたんだよー。待ちくたびれたわ」


弘樹は俺のことを待っていてくれた。


「ごめんごめん。いやなんかさー。部活今日はすごくサボりたくなって」


弘「バスケバカの友志にしては珍しー。明日は赤雪が降りそうだなー。」


「おい、バスケバカってなんだよ!(笑)」


「そのまんまの意味だよ(笑)監督には俺が、友志が下痢ぎみで帰りましたって言っておいた。じゃないと監督怒りそうだったし。」


「さんきゅ。てかもっとましな理由にすれよな(笑)」


俺たちは互いに顔を見合わせて笑った。


弘「早く帰ろーぜー。あ、ちなみに俺と友志、レギュラー入ってたから。」


「おう」


こうして俺と弘樹は一緒に帰った。


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