12時45分
あれから1ヶ月が経って5月。
光との会話に首席の話題は1度も挙がらなかった。
本当に教えてくれる日は来るのか。
進展と言えば、光があたしと帰らなくなった。
悪い意味ではない。
光にも友達ができた。
光と同じクラスの大橋敬吾くんだ。
1度だけ話したことがあって、第一印象は『すごくいい人そう』だった。
見た目はそこそこの不良だけど。
人懐っこい笑顔と話し方で、光も積極的に絡みに行っているらしい。
朝は変わらず一緒に行っている。
あたしはずっと部活に入っていないけど、光は入るものだと思っていたから朝練とか放課後の練習で登下校をともにできないのは覚悟の上だった。
けれど光はたくさんの部活の勧誘を頑なに断って、結局なんの部にも入らなかった。
敬吾くんも同じだ。
敬吾くんがそうしてくれたことに、あたしは密かに感謝している。
光と登校すると、1ヶ月経った今でも光のファンの子達にすごい形相で睨まれたり、すごい勢いで光を横取りされたりする。
そんな面倒なことをなるべく避けたいあたしにとって、敬吾くんがあたしの代わりに光と行動をともにしてくれれば、あたしと光の接点が減って、嫉妬の矛先はあたしには向かなくなる。
そうすることであたしと光の学校での面会時間が大幅に削減された。
とてもとてもありがたいことなのだ。
敬吾くんにはそこまで冷たい刃が降り注ぐこともないだろうし。
一石二鳥?笑
もちろんそんな争いがなければ、光と学校でのトークを楽しみたい気持ちもある。
だけどアパートでもしゃべれるし、今日あったことをしゃべるだけでも話題は尽きない。
こんな生活も悪くないなって思う。
まぁなんにせよ、敬吾くんには感謝だ。


