「葵ー?」
「ん?」
アパートに続く細い道を歩いていると、空を見ながら光があたしを呼んだ。
「葵は大学行くん?」
「んー。そうだね。特にやりたいことはないけど。大学は出とかなきゃ」
「そりゃあそうやんなー」
「光は?進学するでしょ?」
「さーあ。行かんかもなぁ」
「え?首席がなに言ってんのよ」
「あー。…あれな、実力やないんよ」
「え?なんて?」
今、隣から衝撃的な事実が聞こえた気がする。
「…首席やない」
「…どういうこと?」
ほらね。
衝撃的。
「また今度話すわ」
「え、ちょっと…」
ドラマみたいに焦らさないでよ…。
また来週!みたいな…。
「なんでよ…」
「今のは一旦忘れて」
「…いつ教えてくれるの?」
「…いつか。教えられる環境になったら、教えるから。待っとってくれる?」
ずっと空を見ていた光が、最後にあたしの顔を見た。
このときの光はすごく辛そうで。
泣きそうな。
今すぐにでも泣き出しちゃいそうな顔をしていた。
「…分かった。待ってるね」
本当は今ここで聞きたいところだけど、あんな顔されたら聞けない。
でもやっぱり…気になるなぁ。
あの後言葉を交わす間もなく家に着いてしまい、なんとなく気まずい空気になって。ふたりともそのまま帰宅した。


