side マコト
今隣に光がいるにも関わらず
僕は話し合うのを明後日に延ばした。
なんでかって?
怖いからだよ。
光は最近気が立ってるし。
僕は葵を騙していた立場だし。
葵からいつ何を聞かれるかわからなかった僕は今、心の準備や整理をする時間が必要だった。
間違いなく衝突する葵と光を2人きりで会わせるわけにもいかないから、明後日は仕事を休んで2人きりにするのを阻止しよう。
「なぁ、なんで今言うたん。
俺に代わってくれれば俺が自分で言うたよ」
電話を切って考え込んでいると、光は堰を切ったように僕を問い詰めてきた。
「ごめん…。
2人が話すと衝突すると思って」
ここは事務所の会議室。
葵からの着信で急いで適当に駆け込んだ部屋。
いつ誰が入ってくるかわからないこの部屋で、まさに今光は怒りを爆発させようとしている。
「なんやそれ、お節介やわ」
「今まで幾度となくぶつかってきたでしょ?」
「そらそうやけど、もうしばらく会うてへんし、俺も少しは成長しとるわ」
「葵が変わってなかったら?」
「そんなん知らん。俺が葵のペースに持ってかれることなんてない」
「とりあえず、明後日のイベントに行くって言ってたから」
「そらすなや!」
ドンっ!!!
「ちょっと!ここの壁薄いんだから」
最近の光はなぜかよくキレる。
「どうでもええわ、お前葵に逃げるなっちゅーてたけど、お前が一番逃げ足速いんとちゃう?
今ここで電話を代わればよかったもんを、お前は逃げたんやろ?
色々世話してくれたり俺のことバラさんでくれたんも全部俺のためやって分かっとる。
けど…葵を傷付けたら意味ないねん…」
そうだよ。
葵を傷付けたら意味なんてないよ。
でもね、光を傷付けても意味がなくなるんだよ。
「もう葵は知っとるんやし、俺のためにお前を犠牲にすんのはやめてほしい。
最初に俺のこと知った時、別にバラしてええ言うたやん。
結局こうなんねやから」
確かに言われた。
でもバラさなかったのは僕の意志だ。
光のせいじゃない。
今僕が困っているのは、自分のせいだ。


