「おっけー?分かった?」



「うん。おバカなことしちゃったってことだよね」



つまりはそういうこと。
反抗期みたいなもん。



「えー?光は葵を馬鹿にした明美を殴ったんだよ?バカじゃないよー。
明美ってば酷いし学習しないからね?
『あんなぶりっ子と関わるからそうなったんだよ、自業自得だバーカ』って光に言ったんだよー。
それだけならまだ良かったけど、」



いやいや、良くない。



「『あいつだってお前の容姿を利用して高みの見物したいだけなんだよ、そこら変のクソと一緒じゃねーか』なーんて言っちゃって〜。あ、ちなみに明美は素面だった!」



「素面って?」



「酔っ払ってない、お酒飲んでないってこと!」



「へぇ」



「それで、光を止めようとした酒井さんぶっ飛ばして明美を殴ったってわけ!すごかったよ!」



目を輝かせて話してくれる健二だけど、結構すごいこと言ってるよ。


酒井さんをぶっ飛ばしたって…。



「教えてくれてありがとう。
光は無事ってことだよね」



とりあえずは無事そうだからと、安心していると。



「無事ではないな」



優輝さん。

今も尚、冷たい視線で。



「えっ?まさか酒井さんに仕返しされちゃったんですか?」



「なんで酒井なんだよ。ま、明美も殴り返しはしなかったけど。その後だ」



その後?

黙って優輝さんの言葉を待つ。



「親父さんにボコされてたからな」



!?



「光も最初は負けじと胸ぐら掴んで頭突きしたり、抵抗はしてたけど。
完敗だった」



「…っ!?」



「そんでそのまま引きずられて実家だ。外でそんだけやられて、家ん中で何もねぇことねぇだろ」



「…」



「言ったろ?厳しい人だって」



「…はい」



関西弁で喋ることすら許さない光のお父さん。

そんなに怖い人なんだ。

『言いなりになりたくなくて』
いつの日か優輝さんに教えてもらったことの意味が少しだけ分かった気がする。



「悔しくて泣いてる光見たの久々だったー」

「おい、そこまで言うなよ」


泣い…てた?


「あー、つい。でもさ、そんぐらい葵のこと好きなんだよー?光」



「…そんな…」



「ホントだよ?ここまで口喧嘩しても、他人に馬鹿にされたら怒る、なんて今までなかったよー。
どんなに好きだった人でも、1回口喧嘩したらみんなで悪口言っちゃうような子だからね〜」