「ヒメちゃん!もう新しい彼氏、できたのッ?!」


乾杯したばかりのあたし達に向かって、
突然マスターが空気読めなさすぎる発言をした。

あたしは開いた口が塞がらなくなって。


「イヤ、彼氏じゃないですよ…」

と苦笑いしたマーくん。



わなわなと怒りが込み上げる。
このクソオヤジめ〜!


「こ、この人は幼なじみなの!
ホンっト余計な事言わないでよね!!!」


あたしは
笑顔を作りつつも、
怒りを全面に出した台詞を吐いた。



「ヒメ、最近まで彼氏いたんだ…?」


と、マーくん。

あ…あああ〜〜〜!



「う、うん…まぁね」



マーくんにバレないようにマスターを睨みつけると、
奴はこそこそと裏へ逃げていった。



「マ、マーくんは?!」


「俺?俺は彼女、いないよ…」


「そうなんだ〜…」




うん、な、なんか、嬉しいかも…


これは、チャンスですかな?



ない、ない

あるはずがない


何言ってんのヒメ!



心の中で、あたしとあたしが葛藤する。





目の前には、並ぶグラスと、家庭の味がする一品料理。


隣には、8年ぶりに出会った、初恋の人。



これ以上、否定できない、この胸のときめき。


お酒に酔ってるのかな?


それとも



マーくんに酔ってるのかな………