と恭弥が身を翻す。


「悪いけど今日は相手してる暇がなくてね。」




「凛、一『べしゃっ』


二人の後ろで砂の舞う音がした。


二人が反射的に振り返った先には両手塞がって受け身も取れなかった優芽がいた。




「うぅ…」


優芽は両手に持っているりんご飴の片方を凛羽に差し出した。


凛羽はそれを受け取ると、優芽の空いた手を取る。


そして引っぱり起こす。




「ありがと。」


砂で汚れた浴衣をぱんぱん叩きながら優芽は言った。




「優芽。」


と、突っ立っていた恭弥が急に呼ぶ。




「何?」


「捜す手間が省けたよ。」


恭弥は一瞬のうちにして優芽の手を掴み、歩きだす。


引きずられる。




「あうー凛羽ーっ」


最後の別れのような優芽の悲痛な叫びがこだました。


…少なくとも凛羽の中では。




「出来たじゃん。」


「?」




凛羽の静かに言った言葉に、恭弥が振り返った。