口裂け女の恋愛事情


胸の鼓動が正常じゃない。




触れた手が熱い。




これは、なに?





「じゃあ僕もう行くね」





「え…」





行ってしまう。




嫌だ……まだ話していたい…!





「おい!!」





気づくと声が出ていた。




人間は驚いたように振り返る。





「ん?」





「えと…その……名前は?」





とっさに出た質問に、人間はクスッと笑った。





「なぜ笑う…!」





急に恥ずかしくなり、顔が紅潮していくのがわかった。





「いや、なんだか可愛いなぁって思って」





「か、かわわ、可愛い……!?」





初めて言われた言葉に、嬉しいような、恥ずかしいような。




もどかしい気持ちで胸は溢れた。





「僕は八木孝之」





ヤギ…タカユキ…。




タカユキ。人間の、名。