この日は綺麗な満月だった。
暗い路地から夜空を見ると、満天の星空が広がっている。
ちょっと田舎のこの町だからこその星空に、少し得した気分。
星なんて興味ないのに何考えてんのかしら。
私は今日もいつも通り夜道を通る人間を驚かしていた。
でもタカユキに恋してから、私は人を殺してない。
驚かしはするけど。
っていうか、あれから数日、タカユキと会ってないんですけど。
無理もない。
身元も住所も連絡先さえわからないのに加え、知ってるのが名前ぐらいなのだから。
会おうにもこの道を通るとも限らないわけで…。
だからといってタカユキに会う可能性があるのは、初めて出会ったこの道しかない。
私は待つことしかできないのね。
そんなもどかしさに、少し苛立ちを覚えた。