数分すると、サザンカにつく。明るい町はまだ人が多く、より活気が増しているような気がした。
「……ふぅ」
あれからは何事も無く、無事に地面に足がついたカンナは今日も泊まる予定のホテルの前で息を吐いた。
「さ、部屋でトゥーヴァが待ってると思うから、行こうか」
203号室の扉を、開く。てっきりトゥーヴァは部屋で待っていると思っていたが、部屋にトゥーヴァの姿は無かった。
カンナヅキは不思議に思いながらも、ベッドに腰掛ける。
男の子は窓を開き窓から顔を出してキョロキョロと外を見渡す。
「何探してるの?」
カンナヅキはすでにベッドに寝転びながら、そう尋ねる。
「うんとね。トゥーヴァ」
そう帰ってきた答えに一度は納得するものの、またすぐ男の子を見る。
下の行きかう人達を見るなら分かるが、男の子は明らかに下を向いておらず、屋根などを見ている、という感じだった。
「どこ見てるの?」
次は、そう尋ねる
「うんとね。屋根」
「……えっ?」
カンナヅキは一度天井を仰ぎ見て、また男の子を見る。
「トゥーヴァはね、こういう逃げ場の無いような狭い部屋とか嫌いだから……屋根かどっかで待ってるんじゃないかなって思って」
男の子は優しく答えながら、窓を閉める。カンナヅキはなるほど、と大袈裟に手のひらに拳を打ち付ける。
確かにダブルベッドと小さなテーブルとチェアーがあるだけの小さな部屋だと、奇襲を受けると存分に力を発揮できる環境ではない。
カンナヅキはそれを参考にしよう、と考えたが外で待機すると言っても、到底屋根の上で待機出来るわけもなく、そんな奇襲を仕掛けられるような身分でもないため、すぐにやっぱりいいや、と一人頭の中で呟く。
「よく分かっているではないか」
そう、トゥーヴァの声だけがした。カンナヅキはその声に体を起こすが、見当たらない。くるりと左右に視点を変えても見当たらない。
一人カンナヅキがきょろきょろしていると、男の子はカンナヅキを見ながら、そんなとこから出てこないでよ、なんて言って笑っている。
視線は絡み合わず少し下。
ということは。
カンナヅキはベッドから身を乗り出し、ベッドの下を見ると、そこには首だけをひょっこり出したトゥーヴァが居た。
「なっ、なんでそんなとこからっ」
ベッドの下を見た瞬間首だけのトゥーヴァが現れたことにカンナヅキの心臓は駆け足になっていた。
そんなカンナヅキを見越してか、トゥーヴァはふふ、と含み笑いを浮かべると残像だけを残すようにして消えてしまった。
「このように私は、「移動魔法」<ムーブ>も使えるからな」
その声が下のは次は、後ろから。カンナヅキは後ろを振り向くといつの間にかベッドに腰掛けている。
「移動魔法」<ムーブ>を使用すると、瞬間移動のように移動できるようだ。
「トゥーヴァはそれで脅かしたりするのが好きだからね」
男の子は慣れたように柔らかく笑っている。カンナヅキはトゥーヴァの思惑通りの反応をした、という事だ。
「その反応、私は嫌いではないぞ」
口元に浮かんだ笑みを見て、カンナヅキは頬を赤く染めた。


