ギルドの外に出ると、太陽は完全に姿を消し、星と月が治める空となっていた。先ほどまで居た、隣町のサザンカほどではないが、街灯などで明るく照らされているため、やはり星の姿が確認しにくい。
カンナヅキは、空を仰ぎながらぼんやりと考えていた。
「お姉さん、行くよ?」
隣町のサザンカに向かうようだ。男の子のその言葉ではっとなり、慌てて首を縦に振りながら、うんうん、と言う。
そんなカンナヅキを見ながら、男の子は両手を胸の前で合わせる。
男の子は、呪文を唱えるときは両手を自らの胸の前で合掌するようだ。
カンナヅキはぐっとお腹に力を入れる。先程のように恥ずかしい姿を見せたくない、という気持ちから。
「"疾風" 「移動」<ムーブ>」
そう言うと、男の子は両手を大きく左右に広げる。
先程襲った、重力がおかしくなってしまっかのような浮遊感。腹に力を入れていたとしても、足が浮く、という感覚に気が緩んでしまいやはり悲鳴をあげる。
それは一瞬で、今度はまた風が自らを包むだけだった。
「お姉さん、慣れないんだね」
「い、今はもう平気だけどっ!……最初がちょっと苦手なだけだよ」
カンナヅキは少し顔を赤くさせて男の子の手を強く握る。
ふと、男の子の顔を見るとカンナヅキの方を向いて、意地悪な笑顔を浮かべていた。
「ほんとに?」
にやりと年相応の笑みを浮かべた唇からはその言葉だけが紡がれた。
「…へっ?っっうぁひいゃぁ!!??」
がくん、という擬音が聞こえそうなほどに急な重力が襲ってきた。
カンナヅキは悲鳴をあげながら強く男の子の手を握るが、重力に沿って落ちてゆく。
カンナヅキが落ちる、落ちると騒ぐのを男の子は笑いながら見ている。
「なんてね」
まだ笑っている男の子は、落下するカンナヅキの下にまわり抱きとめた。
半泣きで安堵するカンナヅキは次は恥ずかしさと怒りのままに男の子に抱きしめられたまま暴れる。
「ぅわ、とと、落ちちゃうよ、お姉さん」
またわざとのようにバランスを崩す男の子。カンナヅキは小さい悲鳴をあげて大人しくなった。
「お姉さん、ほんと面白いね」
そう言う男の子の口元は先程からずっとあがっている。大きな瞳を妖しく光らせながら。
「……下に降りたら覚えてなさいよ」
にじむ涙を男の子の肩で拭きながら、カンナヅキは吐き捨てるように言った。
男の子はそれでも楽しそうに、怖いなぁ、とつぶやいた。


