「ティアがギルドに居ることは珍しい方だからね、今のうちにでもお姉さんを正式なギルメンにしておきたかったんだ」
男の子はそう言いながらカンナヅキの隣のチェアーに腰掛ける。
ティアはそのまま、二人の前でにこにこと笑っている。
「僕も、もっと皆と話したりしたいんだけどねぇ」
少し悲しそうに下げられた眉。カンナヅキは、思わず理由を尋ねた。
「魔導会…は知ってるかな?その魔導会でも僕は働いていてね。僕の援護魔法が認められて魔導会の幹部になっちゃってね。はは」
魔導会はいわばもう一つの政府のようなものだ。政府よりかは構造は少し単純になっているというものの、魔導会に認められるほどの実力を持つティアはとんでもなく凄い人なんだろう、とカンナヅキは雰囲気で察した。
実力もあり、溢れ出る寛大さ、優しさはギルマスとして申し分ない。
しかし、先日男の子に言われた、「会わせたくない」という言葉が胸の中でずっとつかえていた。
「マスター!」
イラーリの元気な声が響く。カウンターはギルドの奥のほう、今カンナヅキ達が居る所は入り口に近いところ。これだけ騒がしいギルドでよく声が通るなぁ、なんて呑気な事をカンナヅキは考える。
「新作メニューの考案の途中なンスけど〜!」
イラーリは少し怒っているようだ。ティアは少しぎこちなく笑った。
「ごめんよ、今行くから」
ティアは小走りでカウンターに向かった。ギルドでも、忙しいようだった。
「あ、そうだ」
カンナヅキは、体の向きを隣に座っている男の子の方に向ける。男の子は小さく返事する。
「確か、マスターに、会わせたくない…とか言ってたよね?」
小さく笑う。
「ふふ、多分、じきに分かると思うよ」
やんわりとした答えは、より一層謎の塊となってしまった。
別に教えてくれたって、カンナヅキがそう小さく言っても男の子は柔らかく笑うだけだった。


