「ん…」
カンナヅキが、ゆっくりと繭に包まれたような眠気から、覚める。
夢を、見ていた。
少女と青年が出てくる、夢を。少女はカンナヅキ、青年は…風神だ。
「お兄さん…」
カンナヅキはそう、久しぶりに口にした。今まで風神さん、と呼んでいたから。だからといってどうという事はないのだが、ふと、呼びたくなった。
「お姉さん、起きたの」
チェアーに座っていた男の子が、カンナヅキが起きた事に気づきベッドに近づき腰掛けた。
月光だけが照らす中、男の子は静かにおはよ、とだけ言った。
まだ寝ぼけまなこでカンナヅキは体を起こし、開いた窓から吹き込む夜独特の冷たい風を感じながら、目を覚ましてゆく。
するとその開いた窓から、声がした。
「起きたのか」
カンナヅキが男の子と二人だけかと思っていたら窓からの突然の訪問者に驚き、目も完全に覚めてしまった。
その突然の訪問者とは、トゥーヴァだった。
「トゥーヴァさん…?」
何故、トゥーヴァがこの場に居るのか。
そんな疑問をこめてカンナヅキはトゥーヴァの名を口にする。
それを察した男の子は、あぁ、と言ってカンナヅキの疑問の答えを言った。
「ほら、言ったでしょ?四年前、トゥーヴァとラナーがセイレーン討伐の依頼を受けたって…トゥーヴァはセイレーンとの魔法の相性もいいし」
「…主の命令だ。少し同行させてもらうぞ」
男の子に続き、トゥーヴァはそう短く言った。依頼遂行のためならば自らの命も顧みないというラナーの命令ならば分かる、とカンナヅキは納得した。
そして、確かにトゥーヴァは音を操る魔法を使うため、歌で魂を操るというセイレーンの相手をするには相性がいい。
「じゃ、僕は引き続き外を見ておくよ」
男の子はそう言うと、立ち上がりまた小さなチェアーに座り暗い夜道を眺めていた。
「ディエヴァさんの動きを見てるのね」
トゥーヴァは短く、そうだ、と言った。


