柔らかい日差しが、淡い景色を照らす。優しく吹く風は少女の髪をとらえて遊ぶ。
どこまでも続く草原は自然との一体感をどこよりも感じられた。
「お兄さん」
少女はそう、背の高い青年を呼んだ。上に結われた髪が揺れ、青年は少女の方を向き、抱っこをねだる少女の要望に応え抱き上げた。
少女は、嬉しそうに笑いながら、青年の頬を撫でたり髪を遊んだりしていた。そして、たわいもない話をする。
この世界のこと、魔法のこと。
そんな話の、延長。
「お兄さんは、本当に名前がないの?」
少女は、青年を疑うわけではなかったが、名前が無いという事が不思議で仕方がなかった。
それ故に聞いた事だった。
青年は整ったその顔を少し哀しみに歪めた。
「…そうだね、例えば」
そう青年が話したと同時に、強い風かなんなのか。
よくわからない何かに、言葉は掻き消された。
ただ、悲しそうに、青年は少女に例え話をしたのだ。


