ディエヴァはソファーに座るなり、質問を二人に投げかけた。
「怪物という存在を信じますか?」
カンナヅキは呆然とした。
男の子は慣れたように、口元だけ笑みを浮かべ「詳しく聞かせて下さい」と言った。
魔導師ギルドに依頼を頼むような内容は、非現実的な内容が多い。
そのため多くの依頼主は依頼内容を馬鹿にされたり内容を聞くだけ聞いて断られたりしないか、前持って聞く事が多々ある。
ディエヴァはそのうちに入るのだろう。安堵とも困惑ともとれない表情で、前のめりになっていた姿勢を正すように、ソファーに深くかけなおした。
「セイレーンという怪物の事です」
セイレーン、その言葉は男の子の古い記憶をかすめた。
男の子はまさか、と思い呆然し続けたカンナヅキをほとんどほったらかした状態にして、こんどは男の子が口を開く。
「セイレーン…伝説上の怪物と、なった」
「違うんです!セイレーンは、確かに…!」
男の子が話終わる前に、食い入るようにディエヴァが反論する。
表情から、嘘とは思えない。
「……ごめんなさい」
ばつが悪そうに斜めしたを向いたディエヴァは、落ち着かせるように自らの首元に手をもっていく。
男の子は静かに、続けて下さい、と言った。
「セイレーンという怪物はご存知のようですね」
ディエヴァは男の子の方を見て、そう言った。が、カンナヅキは先ほどから呆然とし続けている。
そんな様子のカンナヅキに気づいたディエヴァは、また謝罪した。
「ごめんなさいね…セイレーンという怪物は、ある神話に出てくる怪物の事です…魔力を込めた歌で、人のみならず、生物全てを呪い殺す魔法、主に「呪歌」<ジュカ>として知られた魔法を操る、女の怪物の事です」
カンナヅキはここでやっと話についていける事になった。
「…その、セイレーンが今回の依頼に関わっているんですね」
男の子は心の中で選ぶ依頼をやはり間違えたか、と呟いた。


