風神さん。


「あっ!風坊が帰って来たぞ!」
「ほんとだ、風坊、おかえり!」

外とは比べようにならない騒がしさのギルド内に居る人々は口々に男の子を風坊と呼び、おかえり、と帰還を歓迎した。
そんなギルメンに男の子は少し照れ臭そうに、ただいまと小さく言った。

「記憶を無くしてすぐ、ここの皆にお世話になって…今ではここが家で、ギルメンの皆は家族みたいなものなんだ」

恥ずかしそうに、でも嬉しそうに優しく柔らかく笑う男の子を見て、カンナヅキはどこか疎外感を感じた。

「…それにしても、すごく賑わって…なんだか居酒屋みたい」

自分の汚い気持ちを隠すかのように、カンナヅキはぽつりと呟いた。
男の子は、驚いた様子でギルドの事、何もしらないの?と尋ねるがカンナヅキは頷くしかなかった。

「じゃあ、まずはギルドのこと僕が教えてあげるよ」

何故かドヤ顔というものを決め込む男の子にカンナヅキはツッコミそうになったが、堪えた。

「まず、ギルドにある掲示板について説明するよ」

そう言いながら、男の子が紙が沢山貼られた木製の掲示板まで歩くのをカンナヅキは後ろから近づいて行く。

「この掲示板はね、依頼書を掲示するためのもの。依頼書とは、依頼主が何か困った事があったけど自分じゃどうしようもない、魔導師に力を貸して欲しい、その代わりにこれだけの報酬を与えるよってのが書かれた紙の事!依頼書は様々で、難易度によっても報酬が違ってくる。もちろん、難しいのは報酬が弾むし簡単な依頼はお小遣い程度。そして、この依頼の事は僕たちは基本、仕事や、クエストって呼んだりしているよ。ちなみにこの仕事はギルメンしか受けられない。で、したい仕事が見つかったらここから引っぺがして…」

そこまで言うと、男の子は適当に掲示板を物色した後紙を掲示板から引きちぎり、カウンターまで歩いていく。カンナヅキは、またそれについて行く。

「ギルマス(ギルドのマスターの略)に認めてもらう。でも、ギルマスは居ない時もあるから、その時はいつもカウンターに居るイラーリさんに認めてもらうんだ」

男の子がイラーリと紹介した女性は、綺麗な金髪をハーフアップのツインテールにした、いかにも元気そうな女性だった。

「よろしくッス…新人さんスね♪」

空色の瞳を閉じて笑うイラーリは美人の分類に入るだろう。
カンナヅキですら少し照れてしまった。