――押し間違えと焦りで、背後への警戒が薄らいだ。

「あ」と思った時、小夜子はつんと強い香の匂いに眉を顰めた。

何、この匂い……。

一瞬で気持ちが悪くなって、吐きそうになった。

目がかすみ、足がふらつく。

思わずへたり込みそうになると、
急に現れた誰かの腕に支えられた。

これは……女の人の手?



「おやすみなさい……おひめさま」



腕の主の、侮蔑が込められたような嫌な声……。


誰?