あの出会いから何日経ったって、西園寺先輩を忘れることなんかできなかっ
た。
間近で見た先輩の綺麗な瞳。そして、あの優しい香りを思い出すだけで胸が
すごくドキドキする。
最初は緊張だと思っていたこのドキドキも、今ではちゃんと恋だってわか
る。
そう。この恋があたしの人生で初めての恋。
いつかもう一度話そう。
いつかもう一度話そう。
ずっとそう思って約5年。
話すタイミングを見計らって今日まで過ごしてきたけど、話せたのはあの一
度だけ。
先輩が中学を卒業した時も、悲しい思いの中、まだこの恋は終わってな
い!とあたしは強く決心し、高校はわざと西園寺先輩と同じ高校に入った。
そのために勉強も必死で頑張った。
合格が決まった時には、目がはれるほどの嬉し泣きをしたのを今でも覚えて
る。
とはいったものの、高1になっても、西園寺先輩とは一度も話せなかった。
すれ違う時は何度もあったけど、楽しそうに友達と話してる西園寺先輩を見
たら、なんだか笑顔が見れただけで十分って思ってる自分がいて、それで
チャンスは終わりだった。
初恋が5年間の片思いってどんだけ重い女だよって自分でも思うんだけど、
この気持ちを諦めることもできない。
でも、そんなあたしにも、たった1人の大切な人ができた。
