「え?」
後ろを振り返ると、そこに立っていたのは、学校1イケメンと噂されているあ
たしの歳の1個上の西園寺彰先輩だった。
黒髪の短髪に、キリッとした目。
そして、あたしよりもはるかに高いその身長。
間近で見たのは初めてだったから、なんだかとてもドキドキした。
「西園寺先輩も傘忘れたんですか?」
あたしは、西園寺先輩の手元を見ながらそう言う。
「そうなんだよなー。止むまで待とうと思ったけど、なかなか止んでくれな
くて。てか、俺の名前知ってんだ。」
「知ってるに決まってるじゃないですか!だって、学校1のイケメンで、しか
も勉強も運動もなにもかもが完璧ってみんな噂してるんですよ!」
教室でふと聞いた女子の会話をそのまま伝えてみるあたし。
「ふーん…。完璧か…。」
そう言った西園寺先輩は、どこか切なげな表情を浮かべた。
「どうかしました?」
あたしは西園寺先輩の顔を覗きこむ。
「え?あ…いや、なんでもない。それより、君のほうが噂になってるよ。如月
さん♪」
「え!?な、なんであたしの名前を…。」
あたしはあまりの驚きに戸惑いを隠せない。
なんで西園寺先輩があたしの名前なんか知ってるの?
あたし、なんか悪いことしたっけ?
あたしの頭の中はそんな予想が飛び交っていた。
