ヒトメボレ




(だめっ行かないで!)



心の中で思うのに声が出ない。



伝わらない。




「わっ私行かなきゃ!」



「だめ。」




啓太は私の手首をぎゅっとつかむ。



それを丁寧にほどいて、




「なんで啓太がこんなことを、しかも彼氏の目の前でやったのかわからない。

これは何の感情もないキスだけど悠馬くんには誤解されたのは確か。

私はそれを解かなくちゃ。」




そう言い聞かせるように言うと走り出した。