「だ、だって、……ん」


照れ隠しに発した言葉も、蒼生くんは一瞬で塞いでしまう。


それから何度か重ねた後、名残惜しむわたしを、蒼生くんはうっとりとした美しい鳶色の瞳に映すと、色っぽく微笑んだ。


わたしはこの、美しい瞳に1度も勝ったことがない。


1年前のあの、取り残された絶望感、虚無感の中、真っ黒な穴の空いた心で、お互い必死に甘い熱に縋りながら、


ずっと見上げていた、覆い被さる蒼生くんの瞳が、カーテンから洩れる月日に照らされて、とても綺麗だったことを、……わたしは、この表情を見る度に幾度となく思い出していた。


……もう、わかっていた。


この微笑みは……。


肩を押され、気がついた時には天井にぶら下がったペンダントライトが目に入って、それもすぐに蒼生くんによって隠された。


「寧々ちゃん。」


優しく囁くような声に、ゾクゾクと痺れるような感覚。


……なんて、苦しそうに微笑むんだろう。


蒼生くんの目に映るわたしも、……いつも、こんな表情をしているんだろうか。


怖くなって目を逸らすと、蒼生くんの暖かい手が、わたしの服の中に挿入ってきて、滑らかな動きで肌を撫でた。