「そろそろ帰ろっか、わたしも夕飯の準備あるし、孝輔も疲れたでしょ。」


それから少しして、切りのいいところでわたしが言うと、孝輔はこくんと頷いて、お互い図書館を出た。



必死で鳴き続けるセミ達の声を耳に、帰り道を並んで歩いていると、孝輔が突然、前を向いたまま言った。


「お前もさ、気をつけた方がいいんじゃないの?」


その言葉に、朝霧くんの顔が浮かぶも、どうしてかわからずに孝輔の横顔を見ると、孝輔は続けた。


「だってさ、さっきも、一緒にしないかってお前のこと誘ってたじゃん。なんでだと思う?」

「……え、なんでって、わからないところ、あったからなんじゃないの?」


隣で大きなため息が聞こえて、わたしは頭の中にクエスチョンマークを浮かべながら、孝輔を見つめる。


「今日も図書館に3人で来たろ。それも朝霧に誘われたんじゃないの?」

「う、うん……。そうだけど……。」

「正直さ、アイツはお前の妹じゃなくてさ、お前を狙ってるように思えるんだけど。」


孝輔の言葉を頭の中で反芻するも、ピンとこなかったわたしは、ん?と首を傾げる。