「朝ごはん、トーストでいい?」


恥ずかしさから顔を逸らし、散らばった服を身に纏う。


返事がなくて不思議に思って振り返ると、蒼生くんの落ち込んだような表情が見えた。


「……蒼生くん?聞いてる?」


わたしを鳶色の瞳に入れた蒼生くんの神妙な表情に、ドキリと胸が高鳴る。


「蒼生くん……?」


すると蒼生くんは突然、わたしを強く抱き締めた。


「俺、また、……同じ夢見た。」

「……菜々の、夢……?」

「うん。」


蒼生くんの背中に回そうとした手を止め、それは行き場をなくし、だらりと下に垂らす。


「寧々ちゃん……。俺、ほんとダメ。1年経っても、なんにも変わってない。」


やめて。


やめて、言わないで。


わたしが目を背け続けた現実を、何も知らない蒼生くんは鋭く突き付けてくる。


「寧々ちゃん……、俺、」


わたしは固く、目を閉じる。


耳を塞ぎたい衝動に駆られた。


「俺、寧々ちゃんのこと好きになりたい。」


……わたしは、わたしは何度この人に失恋すればいいんだろう。


2年前から、ずっと抱え続けていたこの想いは、報われることなくさ迷い続けている。


わたし達は、……別に恋人同士という訳ではない。


わたしは1年前からずっと、居なくなってしまった双子の妹の菜々の代わりでしかなかった。


「蒼生くん、……苦しいよ。」

「うん、……ごめん。」