どきりとして、それまで美緒ちゃんに向いていた意識が一瞬で東条くんに持っていかれた。

相変わらず両側に女の子を連れて歩いている東条くんは、甲高い声で話かけてくる女の子に「ふうん」とか「そうなんだ」とか、微笑みながら返していて。


それでも目線は、こちらに向いたまま。


その強い眼差しから目をそらせなくて、戸惑いながら見つめ返していると。


隣の女の子がこちらに目線を向けるのが分かって、その時―…



「えいっ」

「ひゃあうっっ」



脇腹のピンポイントをついてきた美緒ちゃんの指に、体勢を崩した私は咄嗟に目線を外し、美緒ちゃんに寄りかかった。

だからきっと、女の子がこちらを見た時には私は東条くんを見ていなかったし、ただの友達とふざけているだけの女の子だったけれど。


…この子は。



「みーおーちゃ~~~ん!」

「ふん、あんたの弱点なんていくつでも心得ているのよ」

「ずるい!」



ほーっほっほ、とわざとらしく高笑いする美緒ちゃんの背筋にすうっと指を這わせて。



「うひゃうぅっ」



変な声をあげながら背中をそらせてしゃがみこむ美緒ちゃんにお腹を抱えて笑いながら、ふと、すれ違った後の東条くんを振り返って。

同じく振り返っていた東条くんと、また目が合って。


私は、慌てて顔を逸らしてしまったんだ。