「おはよう、美緒ちゃん」

「おはよ。何ぼーっとしてたの?」

「え?してないよー?」

「えー?絶対してたよー」



クスクスと笑いながら、美緒は私の隣に並んで歩き始める。

その言葉に対して、してないってば、と私も笑い返した。


東条くんへの気持ちは、誰にも言ったことがなくて。

だからもちろん、いつも一緒に過ごしている美緒ちゃんにすら、この気持ちを明かしたことはない。

美緒ちゃんは去年に引き続き今年も一緒のクラスになることができたけれど。

それでも今後も、この気持ちを美緒ちゃんに話す予定は、全く、ない。



「あ、はーやとー!」



どこからか可愛らしい女の子の声がして、前を向くと、また女の子が一人、東条くんに向かって走り寄っていく。

そして今度は二人の女の子に挟まれながら歩いていく東条くんに、ほらね、と心の中で苦笑した。

隣で私と同じくその光景を眺めていた美緒ちゃんも、「すごいね」と苦笑を漏らしていた。