教室に戻ってからは、もう、地獄だった。

東条くんとのことが噂として広まっているらしく、そこら中からあからさまな視線を感じるし。

少しでも関わったことのあるような子は、友達と呼べないような子でも、ここぞとばかりに「どういうこと?」と聞いてきた。

困惑してしまって、苦笑いで分からない、と答えればあきらかに不満そうな顔を返されるし、友達でさえもつまらなさそうな表情をする。


おそるべし、人気者効果。

こんな状況に耐えられる根性は私にはない。


美緒ちゃんはそんな私のずっと傍にいて、たくさんフォローもしてくれたけれど、それでも時間がたつにつれて疲れ切っていく私を心配そうに見ていた。


昼休みは、人に囲まれるのを恐れて、授業が終わってすぐに誰もいなさそうな空き教室に美緒ちゃんと駆け込んだ。

やっと誰の視線も感じない場所に逃げることができて、ほっと息をつく。

そんな私を美緒ちゃんは心配そうな表情で見た。



「大丈夫?紗菜」

「うーん…。普段、こんなに注目されること、ないから」

「東条の影響はすごいね」

「うん…」



でも、これって。

もし例えば、私が東条くんに想いを伝える決意をして、東条くんも私を好きで。

例えば、付き合うなんてことになった時には断然あり得てしまうことなんだよね。


じゃあやっぱり。

私は東条くんと付き合う自信もないし、

どうしても考えられないんだと思う。